青春なんちゃら2002・上

2002年4月。僕は東京にあるとある私立高校に入学した。
その学校には、付属の中学校が併設されており、
中学からそのままあがってきた、いわいる内部生とかいう連中が、
入学式の日には、あちらこちらで集団を作ってはわーきゃー騒いでいた。
僕はその連中を最初はうざいやつらだと思っていたし、
実際束になって絡んでくるバカも居て実際うざかったが、
その中のリーダー格の1人、N君と次第に仲良くなった。


僕がクラスメイトの顔と名前を覚えはじめたころ、
一人のかわいらしい女の子に目が行った。名前はKさん。
どうやら付属の中学校から上がってきたらしく、
いつも数人の友達を連れて行動していた。
そんなある日、駅のホームで帰りの電車を待っていると、
反対側のホームにはKさんが。その様子を見ている僕。
しばらくして、彼女のところに一人の背丈の高い男が…。
前後の様子からして、彼氏と帰るために待ち合わせをしていたのだろう。
やっぱり世の中そんなに上手くは行かないもんだと思った。
かわいい女の子には男が居る。そして男が居ない時間はそれほど長くない。
奪い取るか、失恋の直後の僅かな時間を狙うか…。
そう考えるとなんだかむなしくなってきた。
現実はドラマのようには素敵じゃない。どろどろな争奪戦だ。


高1の夏休みがやってきた。高校生活最初の夏休みだった。
あの出来事の後、僕は同じくクラスメイトのYさんと少し仲良くなった。
黒髪にやや長いストレートの髪の毛をした清楚な出で立ちの女の子だった。
首尾よくメールアドレスを交換し、ぼちぼちメールなんかもしていた。
正直に言うと、僕はYさんを上手いこと彼女にしたいと思っていた。


7月の最後の日だったか、僕は仲良くなった男友達のMと、
例の内部からあがってきたN君と3人で花火大会を見に行くことになった。
Nが携帯を地べたに置いて、席を外してる隙に、
Mは僕にNの携帯をのぞき見してやろうと持ち掛けてきた。
僕は出来心ながらそれに同意した。
彼はイケメンで良く女の子グループとも親しかったから、
彼の交遊関係には少なからず興味があったのだ。


携帯を開いて僕とMはわくわくしながらメールボックスを開く。
そこには驚くべきことにYさんの名前がびっしり。
その文面からして、Nが彼女と交際関係にあったのは明らかだった。
彼女のような女の子がNの様な軽めの男が好きだったとは思わなかった。


それ以来、高校生活で僕は誰一人として好きな人ができなかった。
かわいい女の子を見つけては、時折ちょっかいをかけてはみたが、
どうせ僕なんか眼中に入れられてやしないので絶対に深入りはしなかった。
深入りすれば傷を負う。僕はそれを分かっていたし恐れていた。経験的に。
中学の時のお遊戯のような交際の延長線上とは違う何かがそこにはあった。
自分が積み上げてきたものはそこでは何の役にも立たなかった。
そこで逃げない道もたぶんあったと思う。
「望みが高い」と言われてしまえばそうだったのかもしれない。


でも僕は逃げてしまった。逃げた先は石川梨華という17歳の可憐な女の子。
モーニング娘。といえば当時誰もが注目するエンターテイメント集団。
僕はその年から、ちょくちょくと娘。のコンサートに行っていたが、
明らかに「ヲタク」の行動原理に従って動くようになったのは、
2002年の11月、後藤真希が卒業した次のツアーからだった。
僕と石川梨華を遮るものは全部敵だったし、主な敵とは学校だった。
僕はその頃から学校をちょくちょくサボるようになった。
その件で教職員ともいくつかのいざこざを起こした。
僕が生きていた19年と8ヶ月間で16歳が一番不安定な時期だったかもしれない。


たぶん続く。