起床

僕は起床したところで朝風呂にはいることにした。今日も露天風呂の外をのぞいてみると、昨日は奈落の底に見えた下の景色は、なんてことのない山里の景色だった。山の稜線の合間から覗く朝の光が、帯となって心地よく注いでいた。僕はぬるい風呂の水面に目を凝らした。普通、この程度のぬるい風呂からはこのように大量の水蒸気は立ち上らない。きんきん冷えた空気と熱い水との温度差が熱平衡となり、水蒸気を空へと吸い取られるがごとく立ち上らせるのである。自然の雄大さを感じながら僕は部屋と戻った。